あなたは、「精神障害の診断と統計の手引き」(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders、DSM)という本があることをご存知でしょうか?実は私も知らなかったのですが、このDSMという手引きですが、精神障害に関する世界的なガイドライン(手引書)となっています。
別な言い方をすれば、精神障がいの方の診断・治療をどのように行ったほうがいいのかを、精神科医が知るための教科書のようなものですね。日本でも、教科書が変われば教える内容が変わるように、このDSMの内容が変わると全世界の精神障がいの方の診断・治療が変わってきます。
今回、このDSNが実に19年ぶりに改訂され代5版となりました。
http://qq.kumanichi.com/medical/2012/06/post-1971.php
その中で、精神発達遅障がいの分野での大きな変化がありました。
それが、日本でようやく言葉として根付いてきた「自閉症」「アスペルガー障がい」などを、包括的に(まとめて)「自閉症スペクトラム障がい(ASD)」と新たに定義したことです。
つまり、今まで自閉症とか、アスペルガー障がいと言われていた障がいが、「自閉症スペクトラム障がい(ASD)」と1つの概念になるのです。
詳しくは上記のサイトを読んでいただきたいのですが、ポイントだけ簡単に説明しますと、
今までの
- 自閉症
- アスペルガー障がい
- 非定型広汎性発達障害(PDD-NOS、以下PDD)
- 小児崩壊性障害
を自閉症スペクトラム障がいにまとめるということになります。その際の診断基準もよりシンプルに
- 社会的コミュニケーション
- 限定した興味と反復行動
の2つに絞ったそうです。
ちなみに、スペクトラムとは様々な現象を連続体として捉える考え方です。例えば、虹も様々な色が連続して見えているのであのような色の集合体(虹)として見えるのですね。自閉症も社会的にほとんど困難がない方から、かなり自閉的傾向が強い方まで様々な状態があるわけです。
その方々は様々な状態が同じ障がいで存在するので、スペクトラムといわれるのですね。
医学は日々進歩しているのでしょうが、日本ではようやく、自閉症やアスペルガーという言葉が根付いてきた時期だけに、この改訂で更に混乱を招かないように、しっかりとした啓蒙が必要かと思います。