米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences、PNAS)に掲載された論文によりますと、中学校の教科書などに出てきた、「ネアンデルタール人」が他の仲間から介護され、更には死後手厚く葬られたという可能性があるということです。

超高齢化社会の日本では、高齢者虐待防止法(高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律)ができるほど高齢者に対する虐待が社会問題になっていますが、今回の論文は、介護をするという行為まで知能が発展していなかったと思われていた、ネアンデルタール人が介護を行っていたという驚きの内容になっています。

ネアンデルタール人って?

ネアンデルタール人という言葉そのものは一度は聞いたことがあるかと思います。
では、そもそもネアンデルタール人とはどんな人達だったのでしょうか?

ウィキペディアによりますと、

ネアンデルタール人(ネアンデルタールじん、ホモ・ネアンデルターレンシス、Homo neanderthalensis)は、約20万年前に出現し、2万数千年前に絶滅したヒト属の一種である。旧人であるネアンデルタール人は、我々現生人類であるホモ・サピエンス (Homo sapiens) の最も近い近縁種である。

と書かれてあり、約20万年前に存在し、約2万年前に絶滅したヒト属の一種になります。ただ、現代人の直系であるホモ・サピエンスではありませんので、現代人の直接のご先祖様ではありません。

文化的には旧石器時代の人類のため石器を使っていたと思われています。また洞窟を住居としていたと考えられています。この洞窟に住んでいたことが今回の発見の重要なポイントになっています。

また、死者を埋葬するという儀式を行っていたようです。ただし、場所を分けず住んでいるところに埋葬したと考えられています。

なぜネアンデルタール人が介護を行っていたと思われるのでしょうか?

今回なぜネアンデルタール人が介護を行っていたと思われたのでしょうか?
論文では、発見された老人は先程説明したように、洞窟の穴で見つかりました。

洞窟しかし、この洞窟の穴が自然のままの穴ではなく、柔らかい石灰岩と粘土でできていたということや自然の岩石層が水平なのに対して、骨があった部分は垂直だったということなどから、人間が人工的に作ったものだと考えられるのです。

今までの通説では働けなくなった、つまり人の集団にとって食べ物を取ってくるのではなく食べるだけになった老人は放ったらかしにされていたと考えられていました。

しかし、今回の調査で、「老人をわざわざ穴をほって住まわせていた」、ということがわかったのです。研究チームによりますと、老人は集団にとってとても重要な人物だったのではないかと思われています。

俗に言う「長老」ですね。老人の骨には歯がなく、また骨に異常があるので、自力では食べることも歩きまわることもできなかったようです。しかし、仲間が食べ物を噛み砕いて与えるなど、今で言う介護を行うことで永らく生きることができたようなのです。

20万年前のネアンデルタール人が介護を行っていたかもしれないということは、今の私達に様々なことを示唆してくれるのではないでしょうか?

つまり、現代人のように知能が発達していなかったネアンデルタール人が、ある意味本能的に介護を行っていたということは、それがたとえ非効率的のように見えても、長い目でみるとその集団やひいては種が生き延びるために必要な行為であったと考えられないでしょうか?

物事は短期的な視野も必要ではありますが、短期的に見たら無駄に見えても長期的に見たらとても意味があることだったということはよくあることですから。

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