厚生労働省が、保育士の資格を持っているにもかかわらず保育の仕事を希望しない人に、その理由を尋ねたところ、「賃金が希望と合わない」という人が半数近くを占めていることが分かったそうです。
保育士と日本経済と社会状況とのさまざまな関係
日本は、随分前から少子高齢社会になって、 2009年からとうとう人口減少が始まりました。人口減少の一つの要因が、子どもを産みたいけど産めないという環境の変化です。
子どもを養育するのにかかる費用は大体、数千万円(^_^;)だと言われています。
http://usamimi1969.blog21.fc2.com/blog-entry-179.html
まずこの養育費を払うことが、今の日本では経済不況が長引いていることで、難しくなってきています。
巷では専業主婦が人気だそうですが、今の日本の経済状況ですと、アベノミクスで景気が上向いてきたとはいえ、よほど大企業でも夫が務めていない限り、夫婦で共働きが必要となってきます。そうなると子どもが小さいときは、保育園へ預けるという選択肢になってくるのですが、今の時代、保育園へ子どもを預けるということから難しくなってきています。
先日待機児童0宣言をした横浜市の例もあるものの、一般的にはまだまだ待機児童問題が解決するには程遠い状態です。
そこで、厚労省は、まず保育園への待機児童を減らすために保育士の資格を持っているのに実際に保育園で働いていない人(潜在保育士)へ保育園で働いてもらおうとしているのですが、そのアンケートで、上記の「給料が低い」という結果がでたのです。
もう少しアンケート結果を詳しく見てみますと希望しない理由のうち、複数回答で多かった順に
- 「賃金が希望と合わない」が47.5%
- 「他の職種に興味がある」が43.1%
- 「責任の重さや事故への不安」が40%
となっています。
最も多いのが賃金ですが、保育士の平均賃金は300万円前後のようです。
http://nensyu-labo.com/sikaku_hoikusi.htm
http://child.shikakuseek.com/child-income.html
賃金そのものは、全職種の平均賃金より下ですが、絶対的な金額で考えるとそう極端に低いわけではないと思います。
私はこのアンケート結果を見て「賃金が希望とあわない」は3)の「責任の重さや事故への不安」と絡めて考えないといけないのではないかと思っています。
同じく平成23年度厚生労働省委託事業の潜在保育士ガイドブックの報告書にアンケート結果が記載されています。
そのアンケートの結果でも、保育園で就労していない最も多かった理由が
1)求職しているが条件に合う求人がいない
となっています。
しかし2番めの理由として
2)就職に不安がある
が挙げられています。
具体的には、人間関係や勤務時間、雇用条件、責任の重さ・事故への不安が上位に来ています。
アンケート結果の意味を考える
この結果と、先ほどの厚労省のアンケートの結果とを踏まえると、こんな事が考えられないでしょうか?
賃金が希望と合わないということは、絶対的な金額よりも、人様の幼児を預かる保育士という精神的にも肉体的にもかなりハードな職業に対して賃金が見合っていないという意味ではないでしょうか。
「年収300万円程度では、人の命を預かるにはちょっと安すぎませんか?」
ということだと思います。
これはサービス対象年齢がわかい保育士の場合ですが、皮肉にもサービス対象年齢が高くなる介護福祉士についても同じような結果がでています。
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/05/dl/s0520-11c.pdf
http://www.mhlw.go.jp/file.jsp?id=146268&name=2r98520000033t98_1.pdf
つまり今の日本では、子どもと高齢者に携わる専門職に就こうとする人が不足しているということなんですね。
この人材不足を解消するため、さまざまなことが検討されていますが、まずは人を預かるという特殊な仕事に就く人への手厚いサポートを優先しないといけないということを、このアンケート結果が表しているように思えます。