前回のブログでも特別養護老人ホームへの入所基準が厳しくなったとの記事を書きましたが、今回も同じような見直しを厚労省が行っているようです。

特別養護老人ホームや老人保健施設などのいわゆる介護保険施設に入居している低所得者を対象としている居住費や食費の負担を軽減する制度を政府が見直していますが、今回厚生労働省からの具体的な案が発表されたようです。

介護保険施設の負担軽減制度とは?

では見直し前の今現在の、負担軽減制度の概要を説明してみましょう。

まず、軽減の対象となる施設ですが

  • 指定介護老人福祉施設サービス(特別養護老人ホーム)
  • 介護老人保健施設サービス(老人保健施設)
  • 指定介護療養施設サービス(療養型医療施設)
  • 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護

のいわゆる介護保険施設になります。

次にどのような条件の方が軽減の対象となるのでしょうか?

「市町村民税世帯非課税であって、次の要件を全て満たす方のうち、その方の収入や世帯状況、利用者負担等を総合的に考えて、生計が困難な者として市町村が認めた者」
となります。
文中の次の要件とは以下の要件になります。

  • 年間収入が単身世帯で150万円、世帯員が1人増えるごとに50万円を加算した額以下であること。
  • 預貯金等の額が単身世帯で350万円、世帯員が1人増えるごとに100万円を加算した額以下であること。
  • 日常生活に供する資産以外に活用できる資産がないこと。
  • 負担能力のある親族等に扶養されていないこと。
  • 介護保険料を滞納していないこと。

注意しないといけないのは、この5つの要件のうち、1つが当てはまればいいのではなく、5つ全て当てはまらなければならないということです。

特に2番目と、3番目の要件はかなり厳しい基準で、地方の高齢者で宅地以外に農地などを持っている場合は、条件にあわない場合もあるようです。

次にどの程度軽減されるかですが、軽減される負担の種類は

  • 利用者負担額(1割負担分)
  • 食費
  • 居住費(滞在費)
  • 宿泊費

になります。

この額の1/4が実質的な利用額になります。また、老齢福祉年金を受けている方は、1/2になります。

さらに、この軽減制度は他のほとんどの福祉サービスと同じく市役所へ申請しないといけません。困っているからといって、市役所の職員の方から「負担軽減制度を受けませんか」と訪問はしません。

ですので、軽減制度を本人や家族が知っているか、ソーシャルワーカーや福祉関係者が説明しないと、要件を満たしていても受けられないことも考えられるのです。

今回どこが見直されたのでしょうか?

負担軽減では、今回の厚労省の見直しですが、どこが見直されたのでしょうか?大きな変更点は収入ではなく、資産を対象とした点です。

収入は経営で言えば「フロー」となり、入ってくるお金になります。
一方、貯金や有価証券、不動産などは「ストック」となり、いわゆる資産と言われるものです。

収入は動きがあるお金、資産は動かないお金と考えてもいいでしょう。今回はこの動かないお金である、貯金や不動産などの資産を一定以上持っている方は、負担軽減から除外しましょうということになります。

具体的には、貯金や有価証券の合計額が

  • 夫婦で2,000万以上
  • 単身で1,000万以上

ある場合になります。

不動産の場合は固定資産税の評価額で計算して2,000万以上の場合になります。

一見、これだけ資産があるのだから、ごもっともと思われる方も多いかと思います。
しかし、不動産の制限を読んで、バブル世代の私はバブル時代の「地上げ屋」 や「相続税問題」を思い出してしまいました。

不動産の固定資産税の評価額で2,000万以上の条件ですが、都心の結構いい場所に代々住んでおられる方の場合、収入が国民年金だけでも、土地の評価額が2,000万以上になる場合が結構考えられます。

その場合、負担軽減制度を使う場合、土地を売って特別養護老人ホームなどに入居することになるのですが、土地が評価額以上で売れるという保証はありません。

評価額はあくまで評価であって、買い手がない場合は評価額以下で売らないといけない場合も考えられます。また当然売れた額に対して税金がかかります。そして何より、自分が生まれ育った土地と家を手放すということになります。

夫婦のうち片方が特別養護老人ホームに入居する場合、不動産価値が2,000万以上あると試算された場合、土地と家を売らないと負担軽減制度が受けられない事も考えられます。

そうなった場合、負担軽減制度を受けなければ生活できないと、片方の方はアパートなどに引っ越さざるを得なくなる場合もあるのです。今まで家賃がいらなかったのに、家賃を一生払わないといけないようになります。

いつも思うのですが、一律に数字で判断するのではなく、本人たちの実情に即した見直しを行ってもらいたいものです。